横濱物語

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    横濱物語
    小田豊二著
    松葉好市語り
    ホーム社・集英社


    スモーキーてっちゃんに「読んでみますか?」と勧められた本です。
    戦後の横浜、いや横濱の表面上でない生々しい街の歴史を昭和11年生まれの松葉好市さんが語ってくれています。私の父親が昭和4年生まれ。多分この本にある同じ空気を吸っていたと思います。私の父親はあまり多くを語ってくれませんが、本牧のベースの中に子供の私を連れて行ってくれたり、出所の判らないアメリカのお菓子を沢山持って帰ってきてくれたりしました。この本にある結構ハチャメチャで乱暴で命知らずで陰影のあるクールな横濱の残り香を私も嗅いで育ってきたような気がします。私の若い頃も暴力やら喧嘩やらが身の回りにまだまだ普通にあって、私はあまり近付いたりしませんでしたから骨身には沁みていないものの、皮膚感覚では解ります。だからおっかないですが大変に懐かしい気持ちにもなりました。それにしても松葉さんの記憶力の素晴らしさ。ただ覚えているだけでなく、それを今眼前で起こっている出来事のように生き生きと表現されているのが本当に凄い。著者小田さんの質問の言葉は一切なく、松葉さんの受け答えの言葉のみで書かれているのも面白い。失われつつある「横濱」を是非皆様に読んで感じて戴きたいと思います。


    二壜の調味料

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      二壜の調味料
      ロード・ダンセイニ著
      小林晋訳
      ハヤカワ・ミステリ


      私が大好きな作家ロード・ダンセイニのミステリ物短編集です。去年出ていたのをようやく読みました。ダンセイニのミステリ物、いやファンタジー物以外を読むのは初めてだと思います。どうだったかな。それはともかく江戸川乱歩が「奇妙な味」の作品と絶賛した表題作を始め、美味しい短編がぎっしり詰まっています。ミステリですからあまり深くお話は出来ませんが、リンリーさんとスメザーズとアルトン警部とスティーガーとナムヌモなんです。あーナムヌモ。寝ても覚めてもナムヌモ。ナムヌモを一度で良いから味わってみたい…。


      ラヴクラフト全集2

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        ラヴクラフト全集2
        H・P・ラヴクラフト著
        宇野利泰訳
        創元推理文庫


        この全集第2巻は私が20代の頃にラヴクラフトにハマるきっかけとなった一冊。収められているのは「クトゥルフの呼び声」「エーリッヒ・ツァンの音楽」「チャールズ・ウォードの奇怪な事件」の3編。どのお話も1920年代に書かれたと云うので驚きます。特に「クトゥルフの呼び声」は私達の知りうる世界のバックグラウンドにこれ程までに邪悪な物が存在していると云うのを執拗に書ききっており、気分が真っ暗になります。長編の「チャールズ・ウォード…」もまた我々の与り知らぬ真の恐怖に充ち満ちた世界を垣間見せてくれます。何度も何度も読み直して、読む度に熟読して、今回はツアー中に読了して、何故か車窓から見た日本の風景の中に有り得ない物を見てしまったような気がして落ち着かない気持ちになりました。皆様も是非お読みになって非日常の最たる逸品を味わって下さい。


        粘菌 その驚くべき知性

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          粘菌 その驚くべき知性

          中垣俊之著
          PHPサイエンスワールド新書

          「脳がなくとも、知性はある。」とのキャッチコピーに惹かれて読んでみました。世の中、脳はあっても、知性が足りない人が多いですものね。ってそう云う本ではないんですが、とにかく単細胞生物である粘菌が記憶し予測し逡巡し決断する事実から、細胞そして生命そのものが持つリズムの不思議さを我々に提示してくれます。大変に興味深い、面白い本です。ただ序盤は優しく噛み砕いた記述ながら、後半はフーリエ解析などかなり難解な言葉も出て来ますし、最終的には哲学にまで踏み込む内容になっています。じっくりと読まれる事をお薦めします。


          捕食者なき世界

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            捕食者なき世界
            ウィリアム・ソウルゼンバーグ著
            野中香方子訳
            高槻成紀解説
            文藝春秋


            現在の生物多様性の崩壊は食物連鎖ピラミッドの頂点を損なってしまったからであると云う論を、様々なケースを紹介しながら判りやすく解説している本です。全部を鵜呑みには出来ませんが、大変に興味深い内容でありました。生物がどうこうよりも人間が何をしてきてどうしてゆくべきなのかを考えさせられます。


            言わなければよかったのに日記

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              言わなければよかったのに日記
              深沢七郎著
              中公文庫


              更新滞っていてすみません。久しぶりに本のお話です。
              ♪夏は〜いやだ〜よ〜道が〜悪い〜
              の歌でお馴染み(お馴染みじゃないか)「楢山節考」の深沢七郎先生の日記などが収録された本です。深沢先生の人柄にダイレクトで触れられるような文章にグッと来ました。先生が直に私に話し掛けてくれているような気分で一気読みしました。それと云うのも先生のお声を聴いた事があるからです。先生が亡くなったのは私が生まれる3ヶ月ほど前ですが、レコードに収録された語りがCD化されております。


              殆どがギター独奏です。先生が唯一謳っていらっしゃる楢山節で、最初ちょっと歌ってからふとやめて説明の語りを始められるのがとてもワンダフルなんです。語りの後の歌はその前の歌ともう変わっています。でも深沢先生は変わりません。何も飾らないそのままの深沢先生です。日記も歌と同じそのままの深沢先生でした。己を知る事が大事である、そう私を戒めて下さっているようにも思えました。


              質量はどのように生まれるのか

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                質量はどのように生まれるのか
                橋本省二著
                ブルーバックス


                毎日暑い日が続きます。こうも暑さが続くとさすがに読書ペースはかなり落ちます。内容が難しい本だと尚更です。
                この本は私が最近読んでいた難しい本の内容を2010年現在で総合的にまとめてある更に難しい本です…ってこれじゃ判らないですよね。実は当の本人も何がどう難しいのかよく判っていない。斜め読みでばさーっと読んじゃおうと思ってもヴォリューム的にそれは無理。何度も何度も読み継ぎ読み継ぎしているうちに読んだ内容が判らなくなってまたちょっと戻って読む。この本もまた平易な日本語で書かれているのに、そしてかなり砕けた物言いや表現をしてくれているのに、難しいっす。どうやら物事の一番最小の単位、クォークよりも小さい単位があるんじゃないのー? なるほどねーそうかもねー、ってぼんやり判ったっす。この本も読み直し決定! 何度も読み直し!

                この本の仲間
                クォーク 第2版
                消えた反物質
                新装版 四次元の世界
                量子力学の解釈問題


                ラヴクラフト全集1

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                  ラヴクラフト全集1
                  H・P・ラヴクラフト著
                  大西尹明訳
                  創元推理文庫


                  救いようのない話と云えばこちら。
                  20代で読み始めて、何度も何度も読んで、20年以上になります。何度読んでも面白い。スリルや恐怖を味わうというよりも、偶然見つけた何かの記録を読んだら異常でとんでもない事が書いてあってビックリみたいな、そんな本です。もちろんフィクションですが、ただのフィクションに終わらない部分があって、多感な時期に読むと人生真っ暗になるといった次第。広大な宇宙や悠久の歴史の中では人間は無力でちっぽけな存在であると、どの話にも繰り返し執拗に書いてあるんですね。そこが救いようのないってポイント。
                  「インスマウスの影」は最高傑作の一つ。アメリカの歴史のごちゃごちゃした時期のイメージを窺い知る事もできます。緻密すぎる情景描写の膨大さに辟易しちゃう時もありますが、是非お手元に一冊どうぞ。


                  告白

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                    告白
                    湊かなえ著
                    双葉文庫


                    話題の映画の原作本。ちなみに映画は観ていません。
                    スモーキーてっちゃんが読んだと云うので私も読んでみました。
                    何だか救いのない話ですが、イメージをあまり吟味せずに数時間で読み切ってしまったので、あまり怖さを感じる事はありませんでした。映像化されたのを観たらきっと気持ち的に逃げ場がなくて怖くなるのかも知れません。
                    勘違いが勘違いを呼び事態がどんどん悪くなると云うのはありますが、現実では誰かがもっともっと間抜けで出来事がこれほど連鎖反応を起こさないでしょう。その辺も怖さを感じなかったところでしょうか。むしろスイスイ読める文章である意味爽快さを感じるくらいで御座いました。はい。


                    先を読む頭脳

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                      先を読む頭脳
                      羽生善治・伊藤毅志・松原仁著
                      新潮文庫


                      羽生善治名人(現在三冠)は昔から物凄く興味のある方です。七冠達成当時からその言動に注目しておりました。
                      この本は羽生さんの話と認知科学研究者の方の解説が交互に出て参ります。初めは解説、例えば将棋が「二人完全情報確定ゼロ和ゲーム」であるとかの方が難しく思えますが、途中で羽生さんの言葉の重みが尋常でない事に気付きます。平易な言葉遣いで将棋を語っておられる中に、私達とは次元の異なった思考法発想法があるのが判ります。私如きの浅い読みで申し訳ありませんが、その次元が異なると云うのは本当に少しの差なんだと思います。ただ私達はその少しの差を埋める事が出来ずに無知と凡庸に囚われているのだと思います。「実践こそが最大の勉強法」と云う一節も、なるほどねと納得する反面、羽生さんがその実践に至るバックグラウンドの膨大さを知ると「実践」と云う言葉がファンタジーにすら思えて参ります。この本を買ってから何度か読み直していますが、読む度に難しく理解が遠ざかって行くような気がします。素粒子物理学の本が非常に親切に思えて参ります。
                      しばらくはゆっくりと何度も読み直してみようと思います。



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